世の中 安穏なれ
だいぶ前のことだけれど、
テレビを見ていたら街頭でインタビュアーが若い女の子に
「これ、読んでみてください。」とテロップを見せていた。
大きく“玉砕”と書いてあるテロップを前に、若い女の子は
う~ん・・・う~ん・・・とうなりつつ、最後にこう叫んでいた。
「たまくだけ!!」
そこで腹を抱えて笑ったのは、
私も誤答した彼女と同じように若かったからかもしれない。
ちょっとした経緯があって実家の先祖代々の過去帳を預かり中。
浄土真宗なので、お位牌はなく
浄土真宗では位牌にいれる魂がこの世にはなく、
亡くなればすぐに仏になると考えられているのだそう。
なんとなくあの有名な・・・あの風になって大きな空をふきわたる歌のような?
そう考えるとしっくりくる。
過去帳の8日の頁に記してあるのは大叔父。
昭和19年7月8日 海軍上等水兵 〇〇英夫 と記してある。
どこで亡くなったのかもわからない、と生前よく祖母がこぼしていた。
何気なくパソコンで調べてみると、その日はサイパン玉砕の日。
2012年1月の親鸞上人の750回大遠忌法要。
スローガンは「世の中 安穏なれ」だったそうだ。
その思いはきっと誰の胸にも等しくあるのだろう、と想う。
そして私も歳を取り、
玉砕を“たまくだけ”と読む子を笑うよりさきに
似たような状況に遭遇したとき、遠い先祖に思いを馳せるようになった。